モダンジャズをつくった男

 村上春樹6年ぶりの短編集
「一人称単数」を読んでいたら、
”チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ”と
いう話があった。
チャーリー・パーカー(1920〜1955)とは
モダンジャズ(ビバップ)を
生み出した偉大なアルトサックスプレイヤー。
ジャズをやるなら、誰もがパーカーの作曲した
”ビリーズ・バウンス”や”ドナ・リー”、
”コンファーメーション”あたりは
必ず勉強するだろう。
小難しいテーマメロディーと、
細かなコード進行(転調しながら)上で
アドリブをとらなくてはならないので、
このビバップという音楽を演奏するには、
かなりの音楽理論と、技術が必要。

 チャーリー・パーカーがボサノヴァを
演奏するということは時代的にも、
ジャンル的にもありえません。
この短編は、そんなありえない
架空のレコード批評を
大学時代の村上春樹がいたずら心で書き、
実際に雑誌に載ってしまったという話。
・・・しかし、それから15年後、
彼はニューヨークの小さな中古レコード店で、
”チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ”
という、自分が書いた音楽評と全く同じ
タイトルのレコードを見つけることになった。
何か偶然の冗談かと思い、
少し迷いはしたが、そのレコードを買わずに
店を出たそうだ。
しかし、その後どうしても気にかかり、
翌日同じレコード店に行ったが、
それはなかった。
店主に尋ねてもそんなレコードは
存在しないという結び。

 チャーリー・パーカーがもし
ボサノヴァを吹いていたら・・・。
たしかに聴いてみたくはあります。
そんな物語を読んでいたら、
久しぶりにパーカーが聴きたくなった。
アップルミュージックで、
物色していたら、
パーカーの演奏する”ティコ・ティコ”なんてのを
発見した。
へーっ、パーカーがこんなコテコテの
ラテン音楽を演っていたんだと、
ちょっと驚いた。
パーカーがもう少し、
長生きしていたら、あながち
”チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ”
というのも夢ではなかったかもしれない。